私は32年前に、仕事のストレスが長引き、最初は眠れなくなり、次第に、パニック障害
の発作が起きるようになった。しばらくして精神科を受診した。毎日、死にたい願望が沸き
起こるのだ。それはもう、喉が渇いたから水が飲みたいという欲求とほとんど変わらない
生理的欲求だ。
いかにこの欲求を避け、散らせてしまうかがが日々の課題だった。
だから自死(自らの手で命を絶ってしまうこと)した人に「悩みを聞いてあげればよかった」
「自分にできることがあったのではないか」と後悔しても、それは何の助けにもならなかった
はずだ。喉がからからで水を飲みたい人がついに飲んでしまっただけの話だ。
私が何とか死にたい願望から脱出できたのは、自分に合う抗うつ剤が見つかったおかげだった。
抗うつ剤には何種類もあり、人によってあう、あわない、効く、効かないの違いがある。その
合う抗うつ剤を見つけるまでの道のりがとてもつらい。
飲んでいないときの方が楽というくらいのつらさだ。しかしそれは、自死を選ばないために何としても
乗り切らなくてはならない。
ここでいう抗うつ剤は「三環抗うつ剤」と呼ばれるもので、今では古いタイプとされている。
現在処方される抗うつ剤の主流はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)である。副作用の
強い三環抗うつ剤に代わり、副作用の弱い抗うつ剤として開発された。
しかし、副作用が弱いということは効き目も弱いという意味である。SSRIhは効き目が弱いだけでなく、
重要な副作用も指摘されている。自殺を誘発し、攻撃性が増すことがある。
眠れない日々が続いたり、頭が重かったり、朝、なかなか起きられないという、うつの初期の症状が
表れたのなら、ためらわずに精神科や心療内科を受診してほしい。我慢の限界に達して受診すると、回復に
何か月、何年もかかることがあるからだ。そしてSSRIを処方され、どうも効かない、自分にあわないと感じ
たら、勇気をもってこう言ってほしい。「三環系に変えてください」
三環系の抗うつ剤の副作用は、口の渇き、便秘、排尿困難などであり、そう恐れるようなものではない。
早めの受診、そして「三環系」なる薬があることを知ってほしいのだ。うつで死なないために。
(by竹内 久美子 動物高度医学研究家家:産経新聞ーオピニオン)
私はうつとは単に、脳内の神経伝達物質の放出の不具合と捉えており、胃の調子が悪い人が胃薬を飲む
のと何ら変わりがないと思う。薬を飲んで胃の調子が良くなったとしても、薬をやめたらまた調子が悪くなる
ケースもある。だったら必要最低限の薬を服用しつつ、健康を維持すればいい。うつも同じことだと思うのだ。