アメリカ社会の分裂 1) 極端な貧富の格差 2020.11

アメリカ社会の貧富の極端な格差は、先進国で最悪である。トップ0.1%層の金持ちが、ボトム85%の国民より大きな資産を所有している。このような極端な富の集中構造のため、アメリカの民主、共和両党が使う巨額の政治資金の9割は、トップ0.1%の超富裕層によって供給されている。政治資金だけでなく、大手のマスコミ、著明な財団、有力ロビイスト組織の大部分も、この0.1%層がコントロールしてきた。そのためこの30年間、民主、共和両党が作成する予算案、金融政策、税制などは、トップ0.1%層の利益を増大するために作られてきた。最近のアメリカの貧富の差がグロテスクなまでに拡大してきたのは、この制度のためである。その一方で過去30年間、ボトム7割の国民の生活水準は、ひたすら低下してきた。
 アメリカは建前では、「民主主義国家」ということになっている。しかし現在のアメリカの「民主主義」は、少数の超富裕層に
巨額の富と政治支配力が集中するよに仕組まれた「民主主義」なのである。
 このうような政治体制に対して米国民の約6割が鋭い不信感を抱くようになったのは、自然な成り行きであった。
(国際政治アナリスト 伊藤 貫 による)