アメリカ社会の分裂 3)共通の規範を失い

 アメリカの建国は、いわゆる”WASP”(ホワイト.アングロサクソン.プロテスタント)によって行われた。「アメリカの
政治文化は、アングロサクソン的」であり、「アメリカの価値規範は、プロテスタント的」というのが、国民と常識となっていた。
1950年代のアイゼンハワー政権まで、この政治文化と価値規範の正当性を疑うものは稀であった。
 しかし1960年代から、アングロサクソン的な政治文化とプロテスタント的な価値規範を維持しようと努めるアメリカ人は、少数派になってしまった。 1960年代以降のベトナム反戦運動、性関係の「自由化」、等々の”新しい価値規範が、米国民の連帯感と同朋意識を衰退させて、常にいがみ合いばかりする醜いアメリカ社会を創り出したのである。クリントン夫妻やトランプのようなオポチュニスト(時流や世論を利用する便乗主義者)が政治権力を握るようになったのも、アメリカ社会の価値規範喪失現象の反映であった。
 
 以上の3点ーーー1)極端な貧富の格差、2)人種対立感情の悪化3)共通の価値規範の喪失ーーーが、アメリカ社会の分裂現象を促進してきた。 アメリカ文明がこれらの3要因を克服するのは容易なことではない。アメリカの国内政治の混乱と.外交.軍事政策の迷走は、今後も続くだろう。 日本人は過去75年間の安易な対米依存主義を 再検討すべきである。

 (伊藤 貫 国際政治アナリスト)