世界最高の長寿食 5大陸で科学的に調査 第1回 2022年4月

 家森 幸男氏(武庫川女子大学国際健康開発研究所長)は、世界25か国61の長寿.短命地域を訪れ、その土地の人が食べているものを調べることで、食と健康.長寿の関係を調べてきました。
 まる1日の尿を調べ、「何をどのように食べているのか、または食べていないのか」調査、分析してきました。その結果「世界最高の長寿食とはどういうものなのか」があきらかになってきました。
【まさに画期的な成果です】
現在、日本人の平均寿命は、男性81歳、女性87歳と、男女平均で世界一ですが、「健康寿命」は、男性73歳、女性75歳と、意外に短い。その差は男性約8年、女性約12年は、生きていても、寝たきりや、認知症になり、医療のお世話になっている方が多いということです。何が日本人の健康寿命を短くしているのでしょうか。
 その最大の原因は脳卒中です。また、認知症と骨粗しょう症もおおきな原因です。健康寿命を阻害する脳卒中や認知症、骨粗しょう症などと、食生活の関係が分かれば、誰でも自分で健康寿命を延ばすこちができるようになります。
 【塩で死に絶えるラット】
 遺伝的に100パーセント脳卒中を起こすラットを10年かけて開発しました。このラットに1パーセント(お味噌汁程度)の食塩水を与え続けると、100日以内に全滅しました。食塩水を与え続けたラットに、大豆や魚のたんぱく質を多く与えると、寿命は倍に伸びました。ここにカルシウムを加えると、さらに倍になり、マグネシウムを加えると食塩水だけのグループの5倍に寿命になりました。
 【食と寿命の関係を人間でも調査】
 WHO(世界保健機構)がこの調査を100万ドル寄付とを日本で集めれば、認めることになりました。そこで、日本中を講演して回り、二年間で百万ドルの寄付を集め、WHOに寄付して、研究が認められました。
【二十四時間分の尿を分析する】
 何をどのように食べているのか、または食べていないのか」を世界二十五か国六十一の地域を選び、下達測定や採血、尿の採取をしてきました。
【決め手は四つの食品】
⓵【塩分】:チベット族は一日平均十六グラムもの食塩を摂っている。塩の摂り過ぎは脳卒中の他に、心臓病、胃がん、骨粗しょう症の死亡率を高めます。塩の排出を進めるカリウムを多く含む野菜や果物(バナナ、ミカン、メロン、アボカド、ホウレン草、枝豆,人参、ブロッコリイなど)を十分に摂っていると、塩の害を抑えられる。長寿地域では「魚介類」「大豆」「ヨーグルト」がよく摂られています。
➁【魚介類】:には、「タウリン」が多く含まれています。血圧や、中性脂肪、コレステロールを下げ、脳卒中や心筋梗塞のリスクを低くします。魚介類には、タウリンの他に、血液をサラサラにして心筋梗塞や脳梗塞を防ぐDHAやEPAが多く含まれています。
➂【大豆】:『大豆の健康効果は群をぬいています』。栄養素で有名なのが「イソフラボン」です。イソフラボンは心筋梗塞や動脈硬化、高血圧、糖尿病の予防に有効です。女性の乳がん、男性の前立腺がんの予防はもちろん、近年イソフラボンの摂取が多い国ではあらゆる癌の死亡率が低い傾向も分かってきました。さらには骨密度を高くする効果もあるので、骨粗しょう症も予防します。
 もう一つ、大豆の大きな利点が長寿のための重要なミネラルである「マグネシウム」が豊富なことです。「マグネシウム」は体内の300以上の酵素反応に関係し、体を整えています。さらに、高血圧、動脈硬化、肥満、糖尿病の予防効果があります。また、カルシウムと同様に塩の排出を進めます。
➃【ヨーグルト】:にはカリウムやマグネシウム、カルシウムも含まれ、塩の害を抑え、、腸の働きを助け、免疫力を上げることも分かっています。
 【和食は世界最高の長寿食】になりうる:
大豆(イソフラボン)と魚介類(タウリン)の常食は和食の特徴で、心筋梗塞や脳梗塞を減らして日本人の長寿をささえているのです。このように和食は長寿の要素を多く持つのですが、唯一の残念なことは、塩分が高い事です。 日本人の一日の塩分摂取量は男性10.9グラム、女性9.3グラムも摂っています。厚労省の目標値である男性7.5グラム、女性6.5グラムも達成できておらず、WHOの目標値である5グラムにははるかに及びません。 つまり、減塩を心掛けヨーグルトをプラスすれば和食は「世界最高の長寿食」となりうるのです。
 【長寿食は一日一食で効果がある】
 東京海洋大学の一カ月の実験により、一日一回の食事だけを魚と大豆を主菜とした適塩和食に変える「一日一膳」で、脳卒中や動脈硬化も防げるということが科学的に証明できたのです。