疲労の症例

 48歳女性
 5年前の春から疲労がひどい。右半身が凝る。右ふくらはぎがひきつって痛む。全身がむくみやすい。右拇指が曲がりにくい。5年前の秋に京都から浜田市へ夫の転勤のために転地してから体調がいっそう悪くなり、頭痛も生じ、仕事に行けなくなった。低気圧の時には特に良くない。京都が里だが、この5年間一度も帰れない。
 身長は155㎝、体重は47㎏。舌はかなり胖大で、淡泊。腹部に振水音が著明にあり、腹部大動脈の拍動をふれる。
治療経過:浜田市の内科で5年前から五苓散を処方されて、やや軽快していたが、右ふくらはぎのひきつりと、痛みやひどい疲れ、頭痛は残っていた。岡山へ転地してから、頭痛は良くなっていた。

弁証:全身のむくみ、低気圧で悪化、胖大舌、振水音、五苓散が有効なことから、水滞(水分代謝の滞り)であることは明白である。
 5年間服用していた五苓散に真武湯を追加したところ、数日で著明に疲労が軽減して、5年ぶりに京都に里帰りができた。
一週間薬が切れて、ふくらはぎのひきつりがひどくなり、疲れもぶり返した。
「五苓散は有余の水をさばき、真武湯は不足の水をさばく」と古典にあるが、この女性の体質には真武湯があっていたのである。
 なお、これまでに甘草を含む漢方藥を服用すると、尿の出が悪くなり、腹部が張っていた。