禍福は糾える縄の如し 奇なる現実 村上睦美氏 医療ジャーナリスト 2020.10

 村上睦美氏に襲いかかった試練は、あまりに執拗だった。北海道新聞の記者として飛び回っていた村上氏を襲ったのは、「悪性リンパ腫」、それもステージ4であった。38歳の時である。36歳で米国人と結婚し、39歳で自然妊娠した。女の子と男の子の双子であった。31週で男の子「アンデイ」の心音が消えた。母体の中で「生」と「死」が共存していた。姙娠35週までなんとか持ちこたえ、帝王切開で女の子を無事出産した。
 出産の喜びと死産の悲しみを同時期に味わうのはとても辛い。
 そして出産・死産の1年4か月後体調が悪化した。激しい動悸と荒い呼吸に襲われ、赤血球が急速に壊れていく「自己免疫性溶結性貧血」だった。
 その後も、「悪性リンパ腫」と「溶血性貧血」を繰り返しながら、46歳で凍結していた受精卵の移植手術を受けた。難病と闘いながら男の子を出産した。病気の連鎖からは逃れられていない。